生理に関係したトラブル
生理中に起こる生理痛や腰痛・頭痛などのつらい症状が伴う月経困難症、生理前につらい症状が現れて生理開始とともに軽減・消失する月経前症候群(PMS)、イライラ・気分の落ち込みなど心の状態が悪化して日常生活に支障をきたす月経前不快気分障害(PMDD)があります。
月経困難症
生理痛が強すぎて生活に支障を及ぼす状態を月経困難症と言います。生理の度に鎮痛剤を服用していたり、通勤や通学が出来ないほど痛みを訴えたりと生理痛が強い状態です。腹痛と腰痛のほか、頭痛・嘔吐・ふらつき・食欲不振・気分の落ち込みなど心身にさまざまな症状が見られます。
原因
大きく2つに分けられ、明らかな原因となる疾患がない機能性月経困難症と、疾患が原因となる器質性月経困難症があります。
①機能性月経困難症
子宮内膜で産生されるプロスタグランジンによる子宮の過収縮が原因です。またその代謝物により嘔気、下痢、頭痛など全身症状を引き起こすとされています。
②器質性月経困難症
主な原因疾患として、子宮筋腫や子宮内膜症があります。特に子宮内膜症は近年増加傾向にある疾患として、若い年代で発症する場合もあります。
治療
月経困難症の原因となる疾患の有無を調べます。器質性月経困難症の場合には、その原因疾患を治療します。機能性月経困難症の場合は、以下の治療方法から適した治療を行います。器質性月経困難症でも有効な場合があります。
鎮痛剤処方
月経困難症の発生には子宮内膜で産生されるプロスタグランジンが関与しているためプロスタグランジン合成阻害剤である非ステロイド抗炎症薬が有効です。
漢方
即効性はありませんが4~12週間の投与で症状の改善を期待できます。
ピル(LEP低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)
ホルモン分泌の変動が消失するため子宮内膜の増殖を抑制することでプロスタグランジンの産生を減らし、また経血量が減少します。LEP製剤により機能性月経困難症の約90%で症状が改善します。LEP製剤には低用量、超低用量があり、いずれも月経困難症に対して保険適応があります。
月経前症候群・月経前不快気分障害
月経前症候群は生理開始の3~10日前に心身の不快症状が現れて、生理開始4日以内に症状が軽減・消失する特徴があります。身体的症状として下腹部膨満感、疲労感、腰痛、頭痛、むくみ、乳房緊満感があり、精神症状として気分の変動、イライラ、抑うつなどが見られます。精神症状が主体で強い場合は月経前不快気分障害といいます。心身の両方に症状が出やすく、生理のある女性のおよそ5~10%の方がPMS・PMDDと言われています。
原因
明確な原因は特定できませんが、排卵後の黄体ホルモンが関わっていると考えられています。
治療
以下の治療方法から、患者さんの症状や要望に応じて選択していきます。
ホルモン療法
新しい世代の黄体ホルモンを含有したLEP製剤であるヤーズはPMDDに対して優位な改善効果が期待できます。
薬物療法
軽症な場合の対症療法として抗不安薬、浮腫に対する利尿剤、頭痛・腹痛に対して鎮痛剤を処方します。